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大学に行く意味はあるのか、と聞かれることがあります。答えは「見る場面と、まったく見ない場面がある」です。
結局のところ、学歴は有利なの?



場面によります。同じ会社の中でも、新卒と50代の中途では見方がまるで違います。
私は人事と採用の仕事を20年してきました。応募書類を選ぶ側にいた経験から言えるのは、学歴が効くのは入口だけだということです。そして入口を過ぎたあとに、別の差が生まれます。
この記事では、人事が学歴を見る場面と見ない場面を分けて書きます。あわせて、厚生労働省の統計で賃金の差が実際どれくらいあるのかも確かめました。数字は令和6年のものです。
- 人事が学歴を見る場面と、まったく見ない場面
- 学歴フィルターは誰がどの段階でやっているのか
- 高卒と大卒の賃金の差が年齢でどう変わるか
- 高卒と大卒で応募の入口がどう違うか
- 配属と昇進で道が分かれる仕組み
- 学歴がなくても評価される人の共通点
人事が学歴を見る場面


まず、どこで学歴が使われているのかをはっきりさせます。ここを知らないまま「学歴社会だ」と考えると、話がかみ合いません。
大企業はエントリーシートの段階で絞る
企業によって違いますが、応募が多い大企業ではエントリーシートの時点で絞ることがあります。やっているのは採用担当者です。
よく言われる学歴フィルターの正体は、だいたいこれです。何千通も届く書類を全部読むことは、現実には不可能でしょう。どこかで数を減らす必要があり、その基準の1つとして学歴が使われます。
システムが自動で弾いてるのかと思ってた。



そういう会社もあるでしょうが、人が判断している場面のほうが多いと思います。
新卒と第二新卒では見る
学歴が使われるのは、新卒から第二新卒までの採用です。判断する材料が少ないからだと考えています。
社会人の経験がない人を評価するとき、手元にあるのは学生時代の情報だけです。そこで学歴が、ある種の目安として扱われます。納得できるかは別として、これが実際に起きていることです。
大学名まで見る業界もある
学歴だけでなく、大学名まで見ているところもあります。私の見てきた範囲では、都心の超大手で、コンサル系や金融系にその傾向があります。
逆に言えば、そうでない会社のほうがずっと多いのです。業界と規模によって扱いが違うので、「日本全体が学歴社会」とひとくくりにするのは正確ではないでしょう。
賃金に出る学歴の差


では、実際の差はどれくらいなのか。厚生労働省の賃金構造基本統計調査で確かめました。
令和6年の数字
学歴別の賃金は次のとおりです。所定内給与額で、単位は千円になります。
| 学歴 | 男女計 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|---|
| 高校 | 288.9 | 313.2 | 237.7 |
| 専門学校 | 306.9 | 331.2 | 281.3 |
| 高専・短大 | 307.2 | 364.4 | 284.2 |
| 大学 | 385.8 | 417.7 | 315.1 |
| 大学院 | 497.0 | 513.7 | 420.9 |
男女計で見ると、高校と大学の差はおよそ9万7千円です。ただ、この平均値だけを見ても実感につながりません。大事なのは年齢による変化のほうです。
差は年齢とともに開く
年齢階級別に並べると、様子がまったく違って見えます。
| 年齢 | 高校 | 大学 | 差 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 217.3 | 250.8 | 33.5 |
| 35〜39歳 | 282.9 | 373.2 | 90.3 |
| 45〜49歳 | 316.7 | 459.2 | 142.5 |
| 50〜54歳 | 327.6 | 491.7 | 164.1 |
| 55〜59歳 | 331.3 | 527.2 | 195.9 |
| 60〜64歳 | 273.3 | 404.9 | 131.6 |
20代前半の差は3万3千円ほどです。それが55〜59歳では19万6千円まで開きます。約5.8倍になる計算です。学歴の差は、入社した時点ではなく時間をかけて表に出てきます。
60歳で両方とも下がる
もう1つ、表を見て気づくことがあります。55〜59歳をピークにして、高校卒も大学卒も60〜64歳で大きく下がるということです。
大学卒は527.2から404.9へ、高校卒は331.3から273.3へ落ちています。役職定年や再雇用で起きることが、この数字に表れているのでしょう。学歴で差がついても、この落ち込みからは逃げられません。




出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」第3表 学歴、性、年齢階級別賃金
応募の入口の違い


賃金の差より先に、もっと手前で分かれているものがあります。応募できる会社の数です。
高卒は原則1社から
高校生の就職は、学校に届いた求人票から選ぶ形が基本です。そして応募できるのは原則として1社から始まります。
自分で会社を探して自由に応募する、という形にはなっていません。学校を通す仕組みになっているからです。
複数応募は10月から
ただし、ずっと1社しか受けられないわけではありません。東京労働局の資料では、日程がこう決まっています。
- 推薦開始 9月5日以降
- 選考活動開始 9月16日以降
- 複数応募(一人2社)開始 10月1日以降
10月に入れば2社まで応募できます。この申し合わせは都道府県ごとに決められているので、お住まいの地域の内容は労働局や学校で確認してください。
出典:東京労働局「新規学校卒業者の採用について」
大学は何社でも受けられる
一方で大学生は、受けたい会社に何社でも応募できます。ここが入口のいちばん大きな違いです。
選択肢の数が違えば、出会える会社の幅も変わります。賃金の差を生んでいるのは学歴そのものというより、この入口の広さかもしれません。
配属と昇進で分かれる道


入社したあとにも違いがあります。私は製造業が長いので、その範囲での話になります。
製造現場と本社部門
製造業では、配属の傾向がはっきり分かれているのです。高校卒は製造現場、大学卒は開発や営業、管理部門に配属されることが多いのです。
どちらが上ということではありません。ただ、その後の昇進のルートが違ってきます。管理部門から経営へ進む道と、現場から進む道では、通る場所も速さも同じにはなりません。
後から変えにくい理由
最初の配属は、思っている以上に長く影響します。身につく経験が配属先で決まるからです。
現場で10年を過ごした人が、いきなり本社の企画に移ることは簡単ではありません。本人の能力の問題ではなく、積み上がった経験が違うというだけのことです。だから入口の違いが、時間をかけて賃金の差になっていきます。
学歴がなくても評価される人
それでも、高校卒で活躍している人はたくさんいます。共通しているものが2つありました。
- コミュニケーション力がある:人と話して物事を前に進められる
- 真面目にコツコツ取り組む:地味な仕事を続けられる
派手な才能ではありません。ただ、この2つを持っている人は、どの職場でも必要とされていました。学歴は入口の話であって、入ったあとに効くのはこちらです。
学歴が効かない場面


ここまで有利な面を書いてきました。反対に、まったく関係なくなる場面もあります。
50代の中途採用
はっきり言えるのは、50代の中途採用で学歴は見ていないということです。見ているのは実務経験と、即戦力になるかどうかだけになります。
30年前にどの大学を出たかより、直近で何をしていたかのほうがはるかに重要です。書類を開いたとき、最初に目が行くのも直近の勤務内容でしょう。


地方の製造業
地域によっても事情が変わります。地方の製造業は、どこであれ地元の工業高校の生徒を欲しがります。
技術を持っていて、地元に根を下ろして働いてくれる人が求められているからです。ここでは大学名どころか、大卒であること自体が条件になりません。
会社に属さない働き方
自分で事業を起こす場合も、学歴は問われません。評価するのが採用担当者ではなく、お客さんになるからです。
ただし、これは誰にでも勧められる道ではないでしょう。会社の外で通用する何かを、自分で用意する必要があります。


大卒と学歴のよくある質問


採用の仕事のなかで、実際に聞かれることを並べます。
学歴フィルターは本当にあるのか
応募が多い大企業では、あると考えてよいでしょう。ただし全社共通の制度ではありません。応募者の数をさばく必要がある会社で、採用担当者が書類を絞るときの基準の1つとして使われています。
大学名はどこまで見られるか
多くの会社では、大卒かどうかまでしか見ていません。大学名まで見ているのは、都心の超大手のなかでもコンサル系や金融系など一部です。志望する業界によって、気にすべき度合いが変わります。
高卒で大企業に入れるか
入れます。高校生向けの求人にも大企業のものは含まれているのです。ただし応募が学校経由になるため、自分で自由に選べる範囲は大学生より狭くなるでしょう。
50代の転職で学歴を聞かれるか
書類には書きますが、判断には使われていません。見られているのは職務経歴です。募集内容と自分の経験が合っているかで、ほぼ決まります。


結局、大学に行く意味はあるのか
私の答えは昔ほど必要ではないが、あって困ることはないというものです。入口の選択肢が増えるのは確かで、それを狭める理由はありません。
ただ、大学に行けば安心という時代でもなくなりました。入ったあとに何を積み上げるかのほうが、長い目で見れば効いてきます。
まとめ


学歴が効く場面と効かない場面を整理します。
- 応募が多い大企業では、エントリーシートの段階で採用担当者が絞ることがある
- 学歴を見るのは新卒から第二新卒まで。50代の中途採用では見ていない
- 大学名まで見るのは、都心の超大手のコンサル系や金融系など一部
- 賃金の差は20代前半で3万3千円、55〜59歳で19万6千円まで開く
- ただし60〜64歳では高校卒も大学卒も大きく下がる
- 高卒の応募は原則1社から。複数応募は10月1日以降に一人2社まで
- 製造業では高卒が製造現場、大卒が開発・営業・管理部門に分かれやすい
- 学歴がなくても、コミュニケーション力と地道さがある人は評価されていた
学歴は入口を広げる道具です。ただ入口を過ぎたあとは、別の物差しに変わります。50代の転職で見られるのが職務経歴だけであることが、それをよく表しているでしょう。
学歴で一生決まるわけじゃないんだね。



入口では効きます。その先で効くものは、自分で積み上げるしかありません。
働き方そのものを考えるときは、別の記事もあわせてご覧ください。





