【人事が解説】退職金とiDeCoの受け取る順番と税金のルール

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「退職金は、まとめてもらうのと、少しずつもらうのと、どちらがいいのか。」「iDeCoのお金と同じ時期に受け取ると損をするのか。」50代になると、こうした疑問が出てきます。

私は人事の仕事を20年以上しています。退職金の計算や手続き、定年前の説明を担当してきました。自分も会社の退職金の制度とiDeCoの両方に入っていて、転職のたびに退職金を受け取っています。

結論から言うと、退職金とiDeCoは、受け取る順番と間隔で手取りが変わります。税金がかからない枠を、二重に使えない決まりがあるからです。この記事では、税金の計算のしかたと、順番の決まり、2026年1月から変わった点をやさしく説明します。

この記事でわかること
  • 退職金の税金の計算のしかた
  • iDeCoのもらい方3つ
  • 順番で手取りが変わる理由
  • 2026年1月から変わった点
  • 50代のうちに確認すること
読者

退職金とiDeCoを同じころに受け取ると損をするって、本当なの。

サトエヴォ

順番と間隔で税金が変わります。仕組みが分かれば、あわてずに準備できます。

目次

退職金の税金の基本

退職金にかかる税金と退職所得控除の基本を解説するセクションのバナー画像

最初に、退職金の税金のしくみからです。退職金には、税金がかからない大きな枠が用意されています。長く働いた人ほど、この枠は大きくなるのです。

税金がかからない枠がある

この枠のことを「退職所得控除」と呼びます。控除とは、税金の計算をするときに差し引ける金額のことです。

退職金がこの枠に収まっていれば、税金はかかりません。枠を超えた部分だけが、税金の対象になります。

さらに、枠を超えた分も、その半分だけが税金の計算に使われます。給料にかかる税金より、ずっと軽い扱いです。

枠の大きさは働いた年数で決まる

枠の大きさは、その会社で働いた年数で決まります。計算のしかたは次のとおりです。1年に満たない端数は、1年に切り上げます。

働いた年数税金がかからない枠
20年以下40万円 × 年数(80万円より少ないときは80万円)
20年を超える800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年)

出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」

たとえば30年働いた人なら、800万円+70万円×10年で1,500万円になります。退職金が1,500万円までなら、税金はかかりません。

計算の式

全体の式は、次のようになります。

退職金にかかる税金のもとになる金額
  • (退職金の額 − 税金がかからない枠)÷ 2

たとえば30年働いて、退職金が2,000万円だったとします。2,000万円から1,500万円を引くと500万円。その半分の250万円が、税金の計算のもとになります。

なお、働いた年数が5年以下の場合など、半分にできないこともあるので注意してください。

紙を1枚出し忘れると損をする

退職金を受け取るときは、「退職所得の受給に関する申告書」という紙を会社に出します。名前は難しいですが、出すだけで上の計算をしてもらえる大事な紙です。

出し忘れると、退職金の額の20.42%が先に引かれます。自分で確定申告をすれば返ってきますが、手間は増えてしまうでしょう。人事の仕事をしていると、この紙が出ていない人に連絡することがよくありました。

出典:国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」

iDeCoのもらい方3つ

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次にiDeCoです。自分で積み立てる年金で、60歳から受け取れます。もらい方は3つあり、どれを選ぶかで税金の扱いが変わります

まとめてもらう

1つ目は、全額をまとめて受け取る方法です。この場合は退職金と同じ扱いになり、さきほどの枠が使えます。

会社で働いた年数の代わりに、iDeCoにお金を積み立てた年数で枠の大きさが決まります。

少しずつもらう

2つ目は、何年かに分けて受け取る方法です。この場合は公的年金と同じ仲間として扱われ、年金用の別の枠が使われます。

国民年金や厚生年金と合わせて計算されるため、年金が多い人は税金や保険料が増えることもあります。

まとめてと少しずつを組み合わせる

3つ目は、一部をまとめて受け取り、残りを分けて受け取る方法です。ただし、金融機関によって選べる形が違います。自分が使っている会社に確認してください。

なお、iDeCoに積み立てられる金額の上限は2026年12月から増え、会社員は会社の年金と合わせて月6.2万円までになります。

出典:厚生労働省の制度改正に関する資料

順番で手取りが変わる理由

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ここがこの記事でいちばん大事なところです。退職金とiDeCoを近い時期に受け取ると、税金がかからない枠が小さくなることがあります

同じ期間で枠を二重に使えない

会社で働いていた期間と、iDeCoに積み立てていた期間は、たいてい重なっているはずです。両方で枠をまるごと使えると、同じ期間で二度得をすることになります。

そこで、先に退職金を受け取っている場合は、重なっている年数の分だけ枠を減らして計算する決まりです。

会社の退職金が先なら19年

先に会社の退職金を受け取り、そのあとにiDeCoをまとめて受け取る場合です。前の年から数えて19年以内に退職金を受け取っていると、枠が調整されます。

60歳で退職金をもらい、その後にiDeCoをまとめて受け取る形は、ここに当てはまります。

iDeCoが先なら2026年から10年

逆に、先にiDeCoをまとめて受け取り、あとから会社の退職金を受け取る場合です。ここが2026年1月から変わりました。

iDeCoをまとめて受け取った時期枠が調整される期間
2026年1月1日以後前の年から数えて9年以内
2025年12月31日以前前の年から数えて4年以内

出典:国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」

言いかえると、以前は5年空ければよかったものが、10年空ける必要に変わりました。「60歳でiDeCo、65歳で退職金」と考えていた人は、計画の見直しが必要かもしれません。

50代のうちに確認すること

50代のうちに確認することを解説するセクションのバナー画像

決まりを知っても、自分の条件が分からなければ計画は立てられません。50代のうちに、次の3つを確かめておきましょう

会社の退職金の決まりを読む

まず、勤め先の退職金の決まり(退職金規程)です。まとめて受け取るだけなのか、分けて受け取る形も選べるのかを確認します。

人事として説明してきましたが、自分の会社の制度を知らないまま定年を迎える人は少なくありません。

前にもらった退職金を思い出す

転職したことがある人は、前の会社でも退職金を受け取っているはずです。私も転職のたびに受け取ってきました。

いつ、いくら受け取ったかは、枠の計算に関係します。源泉徴収票や明細が残っていないか、早めに探しておきましょう。

受け取る年齢を並べてみる

iDeCoは60歳から75歳までの間で、受け取り始める時期を選べます。会社の退職金の時期と並べて書き出すと、順番を考えやすいはずです。

転職で退職金をもらった人の考え方

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転職の経験がある人は、前の会社でも退職金を受け取っているはずです。私も転職のたびに受け取ってきました。前に受け取った時期によって、扱いが変わります。順番に確認しましょう。

前の退職金から何年たったか

今の会社を辞めて退職金を受け取るとき、前の会社の退職金を前の年から数えて4年以内に受け取っていると、枠が調整されます。

逆に言えば、それより前に受け取っているなら、この調整はありません。10年前や20年前に転職した人は、今回の勤続年数で枠を計算できます。

出典:国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」

前の退職金が少なかった場合

若いうちの転職では、退職金が少額だったり、出なかったりすることもあります。その場合は、前の勤続期間を短く見なして計算する決まりがあります。

目安は、前の退職金の額を40万円で割った年数です(800万円を超える場合は別の式になります)。たとえば前の退職金が80万円なら、2年分として扱われます。

つまり、少ししか受け取っていない人は、重なる期間も小さく見積もられます。

iDeCoに移した分の数え方

転職のときに、前の会社の企業型DCの資産をiDeCoへ移した人もいるはずです。この場合、iDeCoをまとめて受け取るときの年数の数え方が変わることがあります。

自分の加入期間が何年として扱われるかは、使っている金融機関(運営管理機関)に確認してください。ここは人によって違い、書類を見ないと分かりません。

まず書類を探すことから

どの話も、前にいつ・いくら受け取ったかが出発点になります。源泉徴収票が残っていればいちばん確実です。

見つからない場合は、前の勤務先に問い合わせる方法もあります。定年間際になって慌てないよう、50代のうちに探しておきましょう。

人事として見てきたつまずき

人事として見てきた退職金の注意点を書くセクションのバナー画像

制度の説明をしてきて、よくあったつまずきを3つ挙げます。制度の中身より、確認の遅れでつまずく人が多いという印象です。

退職の直前に調べ始める

相談が来るのは、退職が決まってからがほとんどです。順番を考えるなら、本当は数年前から準備が必要になります。

金額だけで比べてしまう

分けて受け取ると、受け取る総額が増える制度もあります。ただし税金や保険料が増えることもあるため、手元に残る金額で比べないと分かりません。

会社に聞けば分かることを調べない

退職金の見込み額や制度の中身は、人事に聞けば教えてもらえることが多いものです。定年前の説明会や面談は、質問するよい機会でしょう。

退職金とiDeCoのよくある質問

退職金とiDeCoに関するよくある質問をまとめたセクションのバナー画像

最後に、よく出る質問をまとめます。私は社労士でも税理士でもないため、自分の金額の判断は専門家や公式の窓口で確認してください。

まとめてと少しずつはどちらが得か

人によって違います。退職金が枠に収まるならまとめて受け取るほうが有利になりやすく、枠を大きく超えるなら分けて受け取る形も選択肢でしょう。

iDeCoは何歳からもらえるか

60歳から受け取れます。ただし積み立てていた期間によって、受け取れる年齢が変わることもあるので確認してください。

会社に企業型DCがある場合はどうなるか

企業型DCのお金も、まとめて受け取れば退職金と同じ扱いです。会社の退職金と同時に受け取ることもあるため、決まりを確認しましょう。

転職で何回も受け取っているとどうなるか

前に受け取った退職金がある場合、働いた期間が重なる部分は枠の計算で調整されます。過去にいつ受け取ったかを確認しておいてください。

退職金で確定申告は必要か

さきほどの紙を出していれば、原則として必要ありません。出していない場合は、確定申告をすれば払いすぎた分が戻ります。

受け取ったお金はどこに置くか

すぐに使う予定がなくても、一度に投資へ回すのは避けたいところです。生活費と分けて、いつ使うお金かを決めてから考えましょう。

まとめ

退職金とiDeCoの受け取り方を振り返るまとめセクションのバナー画像

退職金とiDeCoは、受け取る順番と間隔で手取りが変わります。知らずに時期を決めると、使えたはずの枠を失うこともあります。

この記事のまとめ
  • 退職金には税金がかからない枠がある
  • 30年働いた人の枠は1,500万円
  • 枠を超えた分も半分だけが対象
  • iDeCoのもらい方は3つ
  • 退職金が先なら19年、iDeCoが先なら9年
  • 前の退職金から4年以内かどうかを確認
  • 50代のうちに決まりと過去の受け取りを確認

大切なのは、退職の直前ではなく50代のうちに確かめることです。まずは会社の退職金の決まりと、iDeCoに入っていた期間を確認してみてください。

iDeCoやNISAの口座をまだ持っていない方は、まず口座開設から始めてみてください。キャンペーンの条件はリンク先で確認できます。

お金の制度を自分で確かめられるようになりたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

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