「このまま定年まで働き続けて、本当にいいのだろうか」50代に入ってから、ふとそう考える時間が増えました。そして最近は、もうひとつの問いが重なります。「そもそも、定年まで置いてもらえるのだろうか」と。
私は50代前半の会社員です。子どもが2人いて、住宅ローンもまだ残っています。特別なお金持ちではありません。そんな普通の会社員が目指しているのは、「会社に残っても辞めてもいい状態」をつくることです。
会社を辞めることが目的ではありません。じつは一度、完全リタイアを目指して会社を辞め、そこで失敗しました。この記事では、なぜ「残っても辞めてもいい状態」が必要なのかを、「お金・時間・健康」という3つの軸で書きます。数字は概略にとどめますが、悩みのほうは正直に書きました。
黒字リストラという50代の現実

まず、いま50代の会社員が置かれている状況を書いておきます。業績が悪いから人を減らす、という話ではありません。黒字でも組織を軽くするために早期退職を募る動きが広がっています。
好業績でも人を減らす時代
2025年に上場企業が募集した早期・希望退職は1万7,875人にのぼりました。前年を大きく上回る規模です。
注目すべきは中身でしょう。募集した企業の多くは、業績が悪化していたわけではありません。いわゆる黒字リストラが全体の大半を占めるようになりました。
氷河期世代が対象になる構造
対象年齢を見ると、この動きの意味がはっきりします。ある大手メーカーの募集は、49歳から59歳が対象でした。
就職の入口で苦労した氷河期世代が、いま出口でも同じ場所に立たされています。私自身もこの世代です。他人事として読み流せる話ではありませんでした。この世代がいまから何を備えるべきかは、氷河期世代が資産形成を始めるならFP3級からにも書いています。
会社に守ってもらう前提の崩壊
かつては、定年まで勤め上げれば安心という前提がありました。いまその前提は崩れつつあります。
会社に残るつもりでいても、残れるとは限らない。この現実を前にすると、「辞めるかどうかを自分で決められる状態」の価値が見えてきます。
目指すのは会社依存からの卒業

ここで私が目指しているものを、はっきりさせておきましょう。会社を辞めることではありません。「会社に残っても辞めてもいい状態」をつくることです。この考え方を、私は「会社依存からの卒業」と呼んでいます。
残っても辞めてもいい状態
私が欲しいのは、大金ではありません。「会社に依存しなくても生きていける状態」です。
今の会社員生活は、収入は安定しています。でも、時間と場所は会社に握られています。朝は決まった時間に起き、決まった場所へ通う。この状態が定年まで続く、というのがこれまでの前提でした。
私が目指すのは、こういう働き方です。
- 会社の給料が、収入の全部ではない
- 働く時間や場所を、自分である程度選べる
- 嫌な仕事を「生活のため」に我慢しなくていい
これがセミリタイア、つまり「完全に辞めるのではなく、会社への依存度を下げる」という考え方です。似た言葉のFIREとの違いはFIREとは何かで整理しました。ゼロか100かではなく、その間を目指すイメージになります。
一度リタイアして気づいた孤独
この考えにたどり着いたのは、失敗した経験があるからです。以前、完全リタイアを目指して会社を辞めたことがあります。お金の目処さえ立てば、あとは自由になれるはずだと考えていました。
ところが実際に始めてみると、想像していたものとは違いました。平日の昼間、誰とも顔を合わせない日が続きます。時間はいくらでもあるのに、それを一緒に使う相手がいない。耐えられなかったのは、お金の不安ではなく孤独のほうでした。
この経験ではっきりしたことがあります。私が欲しかったのは「働かない生活」ではなかった、ということです。求めていたのは、働き方を自分で選べる状態でした。
在宅勤務のある会社への転職
そこで方針を変えます。40代後半で転職し、条件のひとつに「在宅勤務ができること」を置きました。
結果として、通勤に使っていた時間がそのまま自分のものになります。人と関わりながら、自分の時間も確保できる。この形なら続けられる、という手応えがありました。
完全に辞めるのではなく、依存度を下げる。その考え方は間違っていなかったと確信できたのは、この転職があったからです。いま掲げている目標も、その延長線上にあります。
なぜ60歳・65歳まで待たないのか
「あと少しで定年なんだから、それまで働けばいい」たしかに正論でしょう。でも、私はそこに引っかかりを感じています。
60歳、65歳まで働いて、それから自由になる。その頃、自分にどれだけ体力と気力が残っているでしょうか。自由になった時に、やりたいことをやれる元気がなければ意味がない。私はそう考えるようになりました。だからゴールを「55歳」に置いています。
2つの選択肢を並べると、違いがはっきりします。
| 比べる軸 | 60〜65歳まで働く | 55歳で依存から卒業 |
|---|---|---|
| お金 | 収入は安定。ただ自由に使える時期は遅い | 収入は減るが、早くから自分で選べる |
| 時間 | まとまった自由時間は60代以降 | 元気な50代から自由時間が増える |
| 健康 | 自由になる頃、体力が落ちている可能性 | 体力があるうちに楽しめる |
どちらが正解ということはありません。でも私は、右側を選べる状態にしておきたいと考えました。
50代からの生き方という点では、以前読んだ本の考え方とも重なります。

お金:数字より「選べる自由」

セミリタイアの話をすると、必ず「いくら貯めればいいのか」という数字の話になります。
もちろんお金は大事です。でも私は、金額そのものより「選べる自由が手に入るか」を重視しています。
教育費が重い50代のリアル
正直に書きます。今、我が家の家計で一番重いのは教育費です。子どもの進学が重なる時期にあたり、この先も負担は増えていく見込みでしょう。
進学先によっては、想定より膨らむ可能性もあります。50代の会社員にとって、この時期の教育費は本当に大きな負担です。
教育費が実際にいくらかかるのかは、公的な調査をもとに別の記事にまとめました。

「一番お金がかかる時期に、セミリタイアなんて正気か」と自分でも思います。だからこそ、勢いではなく計画で乗り切るしかないと考えています。
不動産+投資信託でつくる「会社に依存しない収入」
私が今、力を入れているのが「給料以外の収入」を育てることです。
柱は2つあります。
- 不動産投資:毎月、少しですが手元に残るお金(キャッシュフロー=家賃から経費やローンを引いて残るお金)があります
- 投資信託:コツコツ積み立てて、長い時間をかけて増やしています
不動産から毎月少しでも収入が入る安心感は、想像以上でした。「会社の給料が全てではない」と実感できるからです。
金額の多い少ないより、「収入源が複数ある」という事実そのものが、精神的な余裕を生みます。1本の柱が揺れても、他の柱で支えられるからです。その土台をどう作るかは資産形成の始め方で整理しています。
住宅ローンありでも目指せると考える理由
「ローンが残っているのにリタイア?」とよく言われます。たしかにローンは残ったままです。でも、私はローンの有無だけでリタイアの可否は決まらないと考えています。
大事なのは、「毎月の支出を、給料以外の収入と資産でまかなえるか」という一点です。ローンも含めた支出を、給料に頼りすぎずに回せる形をつくれるかどうか。
私の場合は、不動産と投資信託の収入を育てながら、支出を見直すことで、その形に近づけようとしています。ローンがあること自体は、あきらめる理由にはなりません。
会社の制度から手をつける
給料以外の収入を育てるのと並行して、いま会社から受け取れるものを取りこぼさないことも大事だと考えています。人事の仕事をしていると、制度があるのに使われていない場面を何度も見てきました。
- 社内預金と財形貯蓄 給与天引きでためる。利息の下限や非課税の条件が決まっている
- 持株会 奨励金は有利だが、やめ方と定年後の扱いに制約がある
- 企業型DC 会社が掛金を出して自分で運用する。残高は自分で見にいく
- 退職金とiDeCo 受け取る順番で手取りが変わる
どれも申し込みや確認をするだけで、収入を増やさなくても効いてくるものです。それぞれの中身は別の記事にまとめました。




時間:若い頃より価値が高い50代の時間

ここからが、私がセミリタイアを目指す一番の理由かもしれません。
お金と同じくらい、いや、それ以上に意識しているのが「時間」です。
定年まで働くと、自由な時間はいつ来るのか
会社員をしていると、平日は仕事でほぼ埋まります。自由に使えるのは、週末と、年に数回の長い休みくらいです。この生活を、あと10年続ける。すると、まとまった自由時間が来るのは60歳を過ぎてからです。
若い頃は「時間はいくらでもある」と思っていました。でも50代になって、時間は有限だとはっきり感じるようになりました。
「自由な時間を、いつまで先送りにするのか」。この問いが、いつも私の背中を押しています。
元気なうちに使える時間を取り戻す
私にはやりたいことがあります。
- 好きなカメラを持って、行きたい場所へ出かける
- 子どもの試合を、時間を気にせず応援する
- 学びたいことを、じっくり学ぶ
どれも、元気で時間があるからこそ楽しめることです。
65歳から始めるのと、55歳から始めるのでは、使える時間の「質」がまるで違います。私は、元気なうちに使える10年を取り戻したいのです。
健康:働けるうちにしか楽しめない自由

3つ目の軸は「健康」です。これはお金や時間より、見落とされがちだと思います。
体が動くうちにという意味では、40代でフルマラソンを走ったことがあります。そのときの記録は別の記事に書きました。

50代で変わってきた体力・気力の話
50代になって、正直、体は変わってきました。
徹夜はもう効きません。疲れが抜けるのも遅くなりました。若い頃と同じペースで無理をすると、すぐに体に出ます。
これは悪いことではなく、自然なことです。ただ、「今の元気は、当たり前ではない」と気づかせてくれました。
お金があっても健康がなければ意味がない
もし65歳まで我慢して働き、しっかりお金を貯めたとします。でもその時、体を壊していたら、どうでしょうか。お金はあっても、旅行にも行けない、好きなことも楽しめない。それでは何のために我慢したのか分かりません。
私が「お金・時間・健康」の3つをセットで考えるのは、このためです。3つがそろって初めて、人は本当に自由になれると考えています。
健康なうちに、時間とお金の自由を手に入れる。55歳という目標は、この3つのバランスから逆算した数字です。
55歳に向けていまやっていること

ここまで「理由」を書いてきました。最後に、私が今、実際にやっている準備を紹介します。特別なことはしていません。
資産形成(不動産+投資信託)
柱は、先に書いた不動産投資と投資信託です。
投資信託は、毎月コツコツ積み立てるだけのシンプルな方法です。派手さはありませんが、50代からでも遅くありません。
- 一部に集中しすぎず、幅広く分散する形を選んでいる
- 個別株のように大きく動くものは、最初は避けた
- 試すとしてもなくなって生活に困らない金額から始める
少額から始める考え方は1日100円から始める資産形成に、50代からのNISAの使い方はこちらの記事にまとめました。
退職金やiDeCoを受け取る順番でも手取りは変わります。そのルールはこちらにまとめました。

25年かけてやってきたことは、別の記事にまとめました。

副業・ブログという第二の収入
もう一つの準備が、副業です。私はこのブログも、その一つとして育てています。
副業のいいところは、「会社の外で稼ぐ力」が身につくことです。
- 金額が小さくても、自分で収入をつくる経験は残る
- いきなり大きく稼ごうとせず、月1万円、3万円と少しずつ育てる
- この積み重ねが、いざという時の自信になる
会社に依存しない生き方を考えるようになった原体験は、こちらの記事に書きました。
会社員が不動産で収入をつくるときの、就業規則の確認点はこちらです。

学び直し(資格)で選択肢を広げる
私は今、資格の勉強にも取り組んでいます。
理由は、会社の看板がなくなっても通用する力を持っておきたいからです。会社を離れた時、自分に何が残るか。それを50代のうちに準備しておきたいのです。
- FP3級 何から学ぶかで迷ったときの入口(FP3級を取るべき理由)
- FP2級 学んで家計をどう見直したか(こちらの記事)
- 社会保険労務士 いま勉強中
学び直しは、収入だけでなく「選択肢」を増やしてくれます。選択肢が多いほど、会社への依存は自然に下がっていくはずでしょう。
私が50代で社会保険労務士の試験に挑むことにした理由は、こちらに書きました。

選択肢を増やす手段のひとつとして、エージェントへの登録という方法があります。辞めるかどうかを迷ったときの判断基準は、こちらの記事で書きました。

まとめ:お金と時間と健康でつくる自由

最後に、この記事の要点を整理します。
- 会社依存からの卒業とは、会社に残っても辞めてもいい状態をつくること
- 一度の失敗で、目指す形を「辞める」から「依存度を下げる」に変えた
- お金:金額より「選べる自由」。給料以外の収入を育てる
- 時間:50代の時間は価値が高い。自由を先送りにしない
- 健康:元気なうちにしか、自由は楽しめない
- 今やっていること:資産形成・副業・学び直しの3つ
子どもが2人いても、住宅ローンがあっても、私はあきらめる必要はないと考えています。大事なのは、勢いではなく計画です。
なお本記事は私自身の考え方と取り組みをまとめたものであり、特定の商品や投資手法をすすめるものではありません。実際の判断はご自身の状況を踏まえて行ってください。
定年後に同じ会社で働き続けた場合、給料がどれくらい下がるのかは公的な調査で数字が出ています。人事の立場からまとめました。

50代で最初にぶつかる制度が役職定年です。給料と退職金への響き方をまとめています。

会社に残るか外に出るか。転職を判断するときに見る場所は、こちらにまとめています。

給料以外の収入をつくる方法として、副業を考える人も多いところです。就業規則の確認点をまとめました。

