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賃貸物件を所有しています。確定申告は税理士に頼まず、自分でやってきました。
自分でできるものなんですか?



簿記3級の知識でなんとかなりました。ただ、最初の年だけは本当に苦しかったです。
個人事業として開業届を出し、青色申告で65万円の控除を受けています。会計ソフトはマネーフォワードを使い、分からないところは申告のときの相談で確認してきました。
この記事は手順書ではありません。最初の年に何でつまずいたのか、いまは何が楽になったのかを記録として残します。税額の計算や個別の判断には触れないので、そこは税務署か税理士に確認してください。
- 税理士に頼まずに申告した理由
- 青色申告で65万円を受けるための条件
- 最初の年に一番時間を取られた作業
- 減価償却で手が止まった話
- 書類をどう残しているか
- 最初にやっておくべきだったこと
自分で申告すると決めた理由


最初から自分でやると決めていたわけではありません。いくつかの事情が重なった結果です。
まず自分で中身を知りたかった
人に任せると、数字の意味が分からないまま年が過ぎます。収入と費用がどう動いているのかを、自分の手で確かめたいという気持ちがありました。
費用の面もあります。ただ、理由としてはそちらは小さいほうでした。
簿記3級の知識が役に立った
以前に取っていた簿記3級が、ここで効いてきます。借方と貸方が分かるだけで、会計ソフトの画面が読めるようになりました。
専門的な知識までは必要ありません。複式簿記の考え方が分かるかどうかが、自分でやれるかの分かれ目でした。これから始める人には、先に簿記3級を眺めておくことを勧めます。
分からないところは相談で聞いた
全部を自力で解決したわけではありません。確定申告の時期には相談を受け付けている場所があり、そこで確認しました。
聞きに行って、ちゃんと教えてもらえるんですか?



具体的に何が分からないかを整理していけば、答えてもらえました。漠然と行くと時間が足りません。
青色申告で65万円を取る条件


青色申告の控除額は一つではありません。条件によって65万円、55万円、10万円に分かれます。
| 控除額 | 主な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円の条件に加えて、e-Taxで期限内に送信するか電子帳簿保存を行う |
| 55万円 | 事業に当たる規模で複式簿記により記帳し、貸借対照表などを添付して期限内に提出する |
| 10万円 | 上の条件に当てはまらない青色申告者 |
複式簿記で記帳する
まず前提になるのが複式簿記です。国税庁は55万円の控除について、次のように示しています。
不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること/複式簿記により記帳していること
会計ソフトを使えば、仕訳の形は自動で整います。ただし何をどの科目に入れるかは自分で決めることになるでしょう。
e-Taxか電子帳簿保存が要る
65万円にするには、55万円の条件に1つ足す必要があります。
その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること/確定申告書、貸借対照表、損益計算書等をe-Taxを使用して期限内に送信すること
私はe-Taxで送る形を選びました。紙で出すと、同じ帳簿を作っていても55万円にとどまります。ここを知らないままだと、10万円の差がそのまま消えてしまうでしょう。
開業届と青色申告承認申請書
控除の条件を満たす前に、出しておく書類があります。青色申告は届け出をしてはじめて使えるためです。
私は個人事業として開業届を出し、あわせて青色申告承認申請書も提出しました。青色申告に必要なのは、このうち承認申請書のほうです。帳簿をどれだけ丁寧に付けても、申請書を出していなければ青色申告にはなりません。
青色申告をしようとする年の3月15日までに/その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合は業務を開始した日から2か月以内に
国税庁はこのように示しています。つまりその年の1月16日以後に始めた場合は、開始から2か月以内に出さないとその年は青色にできません。気づいたときには間に合わない、ということが起こるでしょう。
事業に当たる規模かどうか
もう一つ、見落とせない条件があります。不動産所得の場合、控除額が規模によって変わる点です。
貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること/独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること
この基準に届かない場合、青色申告でも控除は最高10万円になります。自分がどちらに当たるかは、早い段階で確かめておくとよいでしょう。
出典:国税庁タックスアンサー No.2070 青色申告制度、No.2072 青色申告特別控除、No.1373 不動産所得の課税のしくみ
一番手間取った領収書の入力


最初の年で一番きつかったのは、計算でも制度の理解でもありません。単純な作業でした。
すべて集めるところから始まる
領収書、請求書、明細。1年分をかき集めるところから始まります。
管理会社からの明細、修繕の請求書、固定資産税の通知、ローンの返済予定表。ばらばらの場所に置かれたものを一か所にまとめるだけで、かなりの時間を使いました。
入力が終わらない
集めたあとは、ひたすら入力です。1件ずつ日付と金額と科目を打ち込んでいきます。
件数が多いほど単純に時間がかかります。最初の年は、この入力だけで何日も潰れました。制度を調べている時間より、ここに取られた時間のほうが長かったほどです。
いまは自動仕訳で消えた
この作業は、いまはほとんどありません。銀行口座とクレジットカードを会計ソフトに連携させ、自動で仕訳が入るようにしたからです。
明細が自動で取り込まれ、科目の候補まで出ます。こちらは内容を確認して直すだけになりました。
それなら最初からやっておけばよかったのでは?



そのとおりです。ただ、連携が効くのは口座を分けてからでした。
減価償却でつまずいた点


制度の面で手が止まったのは、減価償却です。ここだけは、調べても自信が持てませんでした。
何が分からなかったか
建物をどう費用にしていくのか、という話です。購入した金額をその年に全部落とすわけではありません。
- 建物と土地をどう分けるのか
- 建物と設備を分けるのかどうか
- 何年で費用にしていくのか
- 中古の場合はどう考えるのか
どれも調べれば説明は出てきます。ただ、自分の物件に当てはめたときに合っているのかが分かりませんでした。
相談で確認した
結局、申告の時期の相談で確認しました。聞きに行くときは、購入時の契約書と金額の内訳を持っていきます。
書類があると話が早く進みます。口頭で説明しようとすると、こちらの理解が曖昧な分だけ時間がかかるでしょう。
自分で決めないほうがよい
減価償却は、最初に決めた扱いが翌年以降もずっと続きます。
間違えたまま走り出すと、あとから直すのが面倒です。ここだけは独断で決めず、確認してから進めることを勧めます。この記事でも計算の方法には触れません。
書類の残し方と道具


書類は紙のまま積むと、翌年に探せなくなります。早い段階で形を決めておくほうが楽です。
スキャンして原紙は保管
私は受け取った書類をその都度スキャンし、データで見られるようにしています。原紙は捨てずに箱で保管しました。
データがあると、入力のときに手元で開けます。探す時間が消えるだけで、作業の負担はかなり違いました。
書類の保存には年数の定めがあります。何年残すかは国税庁の案内か税務署で確認してください。
使っているスキャナー
使っているのはScanSnapのiX100という小型のスキャナーです。机の端に置いておけるくらいの大きさで、1枚ずつ通して読み取ります。
なお、この機種は在庫限りの販売になっています。後継はiX110で、端子がUSB Type-Cになった点が主な違いです。こちらは使っていないため、使い心地までは分かりません。
ためずにその場で処理する
道具よりも効くのは、ためない習慣でした。
届いたときにスキャンしておけば、年末に積み上がりません。最初の年に苦しんだのは、1年分をまとめて処理しようとしたからです。
個人と事業のお金の分け方


これから始める人に、一番先に伝えたいことがあります。お金の出入りを分けておくことです。
口座を分ける
家賃が入る口座と、生活に使う口座は分けます。経費の支払いも、その口座から出す形にしておきましょう。
分けておくと、通帳の動きがそのまま帳簿になります。混ざっていると、1件ずつ「これは経費か」と判断する作業が増えるでしょう。
クレジットカードも分ける
見落としやすいのがカードです。生活費と修繕費が同じ明細に並ぶと、仕分けに手間がかかります。
口座とカードを分けておけば、会計ソフトの自動仕訳がそのまま使えます。私が入力地獄から抜け出せたのも、分けたあとでした。
分けないとどうなるか
分けないままでも申告はできます。ただ、毎年同じ手間が繰り返されるでしょう。
- 明細を1件ずつ見て経費かどうかを判断する
- 記憶が怪しい取引を調べ直す
- 自動仕訳が使えず手入力が残る
先に分けておけば、この3つがまとめて消えます。口座を1つ増やすだけの話なので、始める前にやっておくと差が大きいはずです。
不動産の確定申告のよくある質問


自分でやるかどうかを決める前に、気になりそうな点をまとめます。
簿記の知識がなくてもできるか
会計ソフトがあれば形は作れます。ただし科目を選ぶ場面で迷うため、複式簿記の考え方は知っておいたほうが楽です。簿記3級の範囲で十分だと感じました。
税理士に頼むべきか
規模や手間のかけ方によります。私は自分でやっていますが、本業が忙しい時期に重なると負担は小さくありません。費用と時間のどちらを取るかという判断になるでしょう。
会計ソフトはどれを使えばよいか
私はマネーフォワードを使っています。口座連携で自動仕訳が入る点が、いまのやり方に合っていました。ほかのソフトを使っていないため、比較はできません。
途中から青色申告に変えられるか
承認の申請が必要です。国税庁は「青色申告をしようとする年の3月15日まで」、「その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合は業務を開始した日から2か月以内」と示しています。思い立った年にすぐ適用されるとは限らないため、早めに確認しておくとよいでしょう。
65万円と10万円で何が違うのか
控除できる金額がそのまま変わります。不動産所得では事業に当たる規模かどうかで上限が分かれ、さらにe-Taxか電子帳簿保存の有無で65万円と55万円に分かれます。
会社員でも申告の時間は取れるか
書類をためなければ、年明けの作業は確認が中心で済むでしょう。苦しいのは1年分をまとめて処理しようとしたときです。月に一度でも手を入れておくと、負担はかなり減ります。
まとめ


不動産所得の確定申告を自分でやってきた記録をまとめます。
- 税理士に頼まず自分で申告している。簿記3級の知識が役に立った
- 分からないところは申告時期の相談で確認した
- 青色申告には承認申請書が要る。その年の1月16日以後に始めるなら開始から2か月以内
- 青色申告の65万円には、複式簿記とe-Tax(または電子帳簿保存)と期限内申告が要る
- 不動産所得では、事業に当たる規模かどうかで控除の上限が変わる
- 最初の年に一番時間を取られたのは、領収書を集めて入力する作業だった
- 減価償却は独断で決めず、書類を持って相談した
- 書類はその都度スキャンし、原紙は保管している
- 一番先にやるべきは、口座とクレジットカードを生活用と分けること
最初の年の苦しさは、制度が難しかったからではありません。準備をしていなかったからです。口座を分けて、書類をためない。この2つだけで、翌年からの負担はまったく違いました。
なお、この記事は自分の記録であり、税額の計算や個別の判断には触れていません。ご自身の扱いについては、税務署か税理士に確認してください。
会社員として物件を持つ場合は、就業規則の扱いも確認しておきたいところでしょう。管理を任せる相手の選び方とあわせて、別の記事にまとめています。




始めるまでに何年もかかった経緯は、別の記事にまとめています。



