【人事が解説】50代で持株会に入るべきか 退会と定年後の扱い

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持株会について人事の窓口で50代の方からいちばん多く受ける質問は、「いまから入ったほうがいいのか」です。奨励金があると聞けば入らないと損に思えますし、定年が見えてきた年齢だと今さらという気もします。

読者

奨励金が10%もつくなら、50代でも入ったほうが得だよね。

サトエヴォ

得ではあります。ただ入る前に、やめ方と定年後の扱いを知っておいてください。

私は持株会に加入していて、いまも拠出を続けています。人事として加入手続きに携わり、加入者からの問い合わせにも答えてきました。その立場から先に結論を言うと、奨励金が大きくても無理に入る必要はありません。

理由は、持株会が入るときより出るときに制約の多い制度だからです。この記事では、50代で判断するときに見ておくべき点を5つに整理します。

私は社会保険労務士ではなく、人事の仕事をしている会社員です。持株会の規約は会社ごとに異なるため、個別のご相談には応じられません。実際の取扱いは勤務先の持株会規約と事務局でご確認ください。

この記事で分かること
  • 50代で入るかどうかを決める考え方
  • 一度やめると戻れない会社が多いこと
  • 定年退職と再雇用で扱いが変わること
  • 会社を辞めても1年は続く売買の規制
  • 奨励金が課税されているという事実
  • 拠出額をいくらにするかの目安
目次

50代で入るかどうかの判断

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まずは入るかどうかです。基本の仕組みと奨励金の相場は別の記事にまとめているので、ここでは50代ならではの判断材料に絞ります。

いちばん多い質問は入るかどうか

50代の方から受ける質問で最も多いのが、加入すべきかどうかというものです。拠出額を変えたいとか、やめたいという相談よりも多いと感じています。

背景には、退職金や老後資金を意識し始める年齢だということがあるのでしょう。子どもの教育費が終わって、毎月の余裕が出てきた時期とも重なります。

奨励金は50代でも同じ率

奨励金の率は年齢では変わりません。東京証券取引所の調査では、調査対象の会社の96.6%が奨励金を出しており、平均は拠出1,000円につき107.24円でした。最も多いのは1,000円につき100円、つまり10%の上乗せです。

出典:東京証券取引所「2024年度従業員持株会状況調査結果の概要」2026年2月16日公表。2025年3月31日時点。奨励金額は手数料の補助を除いた金額。

50代で入っても、20代で入っても、この上乗せは同じように受けられます。年齢を理由に不利になる制度ではありません。

残り年数で変わる考え方

変わるのは、積み立てられる期間のほうです。55歳で入って60歳の定年まで続けるなら、拠出できるのは5年間です。20代で入る人とは、できることが違ってきます。

期間が短いと、値下がりしたときに回復を待つ余裕がありません。20代なら30年かけて取り返せますが、5年しかなければ下がった価格のまま退職を迎える可能性があります。

だから50代の判断は「入るか入らないか」より「いくらまでなら入っていいか」で考えるほうが現実的です。金額の決め方は後の章で書きます。

一度やめると戻れない仕組み

持株会は退会すると再加入できない会社が多いことを解説するセクションのバナー画像

50代で知っておいてほしいのが、ここです。持株会は入るのは簡単ですが、出入りが自由な制度ではありません。

拠出の変更には受付期間がある

拠出額を増やしたり減らしたりする手続きは、いつでもできるわけではありません。年に何回かの受付期間を設けている持株会が一般的です。

家計が苦しくなったから来月から減らしたい、と思っても次の受付まで待つことになります。始めるときは、この先1年は変えられないつもりで金額を決めてください。

退会すると再加入できない会社が多い

もっと重いのが退会のほうです。私が見てきた範囲では、一度やめたら原則として再加入を認めない持株会が多いと感じています。

「とりあえずやめて、余裕ができたらまた入ればいい」という考え方が通らないということです。退会は後戻りのきかない決断になります。自分の会社がどうなっているかは、持株会規約の退会と加入の条項に書かれています。

読者

それは知らなかった。気軽にやめられるものだと思ってた。

サトエヴォ

ここを知らずにやめてしまう人がいるので、先にお伝えしています。

減額という選択肢を先に考える

拠出を続けるのが苦しくなったとき、退会の前に検討したいのが減額です。

やりたいこと手続き後戻り
拠出額を減らす受付期間に変更を申し込むできる
拠出を止める(休会)規約に制度があれば申し込む規約による
退会する事務局に退会を申し込むできない会社が多い

休会の制度があるかどうかは持株会によります。まずは最低額まで減らして籍を残し、本当にやめるかどうかは時間をかけて決めるほうが安全です。

定年と再雇用での扱い

定年退職と再雇用で持株会の扱いがどう変わるかを解説するセクションのバナー画像

50代がいちばん知りたいのが、定年のときにどうなるかだと思います。ここは会社によって差が出る部分です。

退職すると退会になる

持株会は従業員のための制度なので、退職して従業員でなくなれば退会になるのが原則になります。定年退職でも、自己都合の退職でも同じです。

退会すると、持ち分の株を自分の証券口座に移すか、現金で受け取るかの手続きに進みます。どちらになるか、100株に満たない分をどう扱うかは規約しだいです。

再雇用で続けられる会社もある

一方で、定年後に再雇用で働き続ける場合は、持株会も継続できる会社があります。再雇用も従業員であることに変わりはないからです。

ただしこれは会社ごとの取り扱いです。定年でいったん退会となる会社もあります。定年が近づいたら、規約か事務局で先に確認しておいてください。

再雇用後は収入が下がるのが普通なので、続けられるとしても拠出額の見直しはセットで考えることになります。

辞め方で分かれる株の行き先

退会したあと、株をどうするか。ここに辞め方による違いが出ると感じています。

  • 自己都合で辞めた方 売却する人が多い印象
  • 定年で辞めた方 そのまま保有を続ける人が多い印象

自己都合の場合は、転職や独立で当面の資金が要ること、辞めた会社の株を持ち続ける気持ちになりにくいことが理由だと思います。

定年の場合は、長く勤めた会社への愛着もあるでしょうし、退職金があるので急いで現金化する必要がないという事情もあるのでしょう。

これは私が見てきた範囲での印象で、統計にもとづくものではありません。

退職後1年は売り方に注意

退職後1年間続くインサイダー取引規制と持株会の売却を解説するセクションのバナー画像

ここから書くことは、定年で辞める方にいちばん知っておいてほしい内容です。会社を辞めたら自由に売れる、と思っていると危ない場面があります。

全従業員が会社関係者にあたる

インサイダー取引を禁じているのは金融商品取引法の第166条です。規制を受ける「会社関係者」として条文が挙げているのは、上場会社等の役員、代理人、使用人その他の従業者です。

つまり役職や部署に関係なく、働いている人は全員が会社関係者にあたります。その人が職務に関して重要な事実を知ったときは、その事実が公表されるまで自社株を売買してはいけません。

会社が事前に売買を制限する対象は、決算や経営の情報に日常的に触れる特定の部署に絞っていることが多いと思います。ただし説明そのものは、加入者全員が受けているはずです。

場面会社の対応法律の適用
持株会に加入するときインサイダー取引についての説明があるかかる
単元株になって出庫するときあらためて説明があるかかる
特定の部署にいるとき売買を事前に制限されることがあるかかる
退職して1年以内在職中に受けた説明が最後になるかかる

私が関わってきた範囲では、持株会に加入するときと、100株の単元株になって出庫するときの2回、インサイダー取引についての説明をしています。知らされていない人はいない、というのが会社側から見た実態でしょう。

それでも売る段階で意識から抜けてしまうのは、出庫と売却のあいだに時間が空くからでしょう。出庫を申し込んだ時点では、まだ売ると決めていない人もいます。

覚えておいてほしいのは、制限の対象部署でないことと、規制がかからないことは別だという点です。事前の案内が来ないからといって、規制の外にいるわけではありません。

積立の買付だけが適用除外

持株会を通じた毎月の積立には、規制の適用除外があります。根拠は有価証券の取引等の規制に関する内閣府令の第59条です。

除外されるのは、一定の計画に従い、個別の投資判断に基づかず、継続的に行われる買付けで、1回当たりの拠出金額が200万円に満たない場合に限られます。自分で買うタイミングを選んでいないから除外される、という考え方です。

大事なのは、条文が「買付け」としか書いていないことです。売るときはこの除外に当てはまりません。引き出した株を売る場面では、規制がそのままかかってきます。

会社を離れても1年は続く規制

もう一つ見落とされやすいのが、退職後の扱いです。第166条第1項の後段には、会社関係者でなくなった後1年以内の人についても同様とする、と書かれています。

在職中に職務に関して重要な事実を知っていれば、辞めてから1年以内は同じ規制がかかります。定年退職して持株会の株を受け取り、さあ売ろうというときに効いてくる話です。

売る前に、自分が知っている未公表の情報がないかを一度考えてください。判断に迷うときは、辞めた会社でも総務や法務に確認できます。

奨励金が課税されている事実

持株会の奨励金が給与として課税されていることを解説するセクションのバナー画像

もう一つ、加入者にあまり知られていないことがあります。奨励金は丸ごともらえているわけではありません。

給与明細に奨励金として載る

奨励金は、給与明細に「奨励金」という項目で記載されます。支給の欄に出てくるので、給与と同じ扱いです。

給与と同じ扱いということは、所得税と住民税の対象になり、社会保険料の計算にも入ってくるということです。会社が肩代わりしてくれる手当ではありません。

気づいていない人が多い理由

それでも、課税されていることに気づいていない人が多いと感じています。明細の項目を一つひとつ見る人は少ないからです。

「奨励金10%」という言葉だけが独り歩きして、1万円出したら1万1,000円がそのまま自分のものになる、という受け止め方になりがちです。

手取りで見た本当の上乗せ率

では実際はどうなるのか。仮に所得税と住民税を合わせた税率が20%の人が、毎月1万円を拠出して10%の奨励金を受け取る場合で考えます。

  • 奨励金は月1,000円。年間で1万2,000円
  • そこに税率20%がかかるので、年間の税負担は2,400円
  • 手元に残る上乗せは年間9,600円で、率にすると8%前後

10%が8%になったところで、有利な制度であることは変わりません。ただし宣伝されている率そのままではないとは知っておいてください。この数字を頭に入れたうえで、NISAの非課税と比べることになります。

持株会のよくある質問

50代の持株会に関するよくある質問をまとめたセクションのバナー画像

人事の窓口で実際に受けた質問から5つ挙げます。規約によって異なる部分が多いので、一般的な考え方として読んでください。

50代からでも入る価値はあるか

奨励金の分だけは有利なので、少額なら価値はあります。ただし無理に入る必要はありません。

NISAの積立をまだ始めていないなら、そちらが先です。持株会は分散が効かない投資なので、土台ができてから足すものだと考えています。

拠出額はいくらが適切か

私は持株会と自社株を合わせて、金融資産の1割までという線を引いています。

給料もその会社から出ていることを思い出してください。会社が傾いたときに収入と資産が同時に減るので、割合を大きくすると生活の土台が揺らぎます。

やめたあとに入り直せるか

再加入を認めていない持株会が多いと感じています。やめる前に規約の加入資格の条項を必ず確認してください。

苦しいだけなら、退会ではなく減額で乗り切れないかを先に考えることをおすすめします。

定年後も株を持ち続けていいか

持ち続けること自体に問題はありません。証券口座に移した株は、退職後も自分の資産です。

気をつけたいのは、その株だけが大きく残る状態です。退職金の受け取りと合わせて、資産全体の偏りを見直す時期にしてください。

持株会だけで老後資金を作れるか

おすすめしません。1社の株価に老後の生活が左右されることになります。

分散した資産を土台にして、持株会は奨励金を取りにいく補助として使う。この順番を崩さないほうが安全です。

まとめ

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50代の持株会について、この記事で確認したことを整理します。

  • 奨励金の率は年齢で変わらない。平均は拠出1,000円につき107.24円
  • 50代は積み立てられる期間が短く、値下がりを待つ余裕がない
  • 拠出の変更には受付期間があり、退会すると再加入できない会社が多い
  • 退職すると退会になるが、再雇用で続けられる会社もある
  • 売買の規制は職位に関係なく全従業員にかかり、退職後1年以内も続く
  • 適用除外があるのは積立の買付だけで、売るときは除外されない
  • 奨励金は給与扱いで課税される。手取りで見ると上乗せ率は下がる

入り口の奨励金は分かりやすく、出口の制約は分かりにくい。これが持株会という制度の性格だと思います。50代で判断するなら、入る前にやめ方と定年後の扱いを確認する。それだけで判断の質が変わります。

読者

奨励金だけ見て決めるところだったよ。

サトエヴォ

多くの人がそうです。規約の退会の条項だけでも読んでおいてください。

持株会の仕組みそのものと、NISAとの比べ方はこちらにまとめました。会社の制度をどう組み合わせるかも、あわせて見てもらえればと思います。

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