50代に入って最初にぶつかる制度が、役職定年です。調べると「給料が7割になる」という数字が出てきますが、あれは国家公務員の話で、民間の決まりではありません。
じゃあ民間はどうなるの。



会社ごとに違います。だからこそ、自分の会社の規程を読むのが先なんです。
人事として制度の説明をしてきた立場から、役職定年で何が減るのか、退職金にどう響くのかを整理しました。公務員の制度は人事院の公表資料で確認しています。
私は社会保険労務士ではなく、人事の仕事をしている会社員です。制度の中身は会社ごとに異なるため、個別のご相談には応じられません。実際の取扱いは勤務先の規程でご確認ください。
- 役職定年で何が起きるのか
- 「7割」という数字の出どころ
- 給料のどこが減るのか
- 例外で役職を続ける人もいること
- 退職金への響き方
- 役職定年をやめる会社が出てきた理由
役職定年とは何か


言葉は聞いたことがあっても、中身を説明できる人は多くありません。まず仕組みから整理します。
一定の年齢で役職を外れる
役職定年とは、決められた年齢になったら管理職などの役職から外れる仕組みです。会社を辞めるわけではなく、役職のない立場で働き続けます。
定年とは別の制度なので、会社に残ったまま、肩書きと給料だけが変わります。
民間は55歳が多い
私が人事として見てきた範囲では、55歳という区切りが多いところです。
ただし法律で決まっているわけではありません。制度そのものを置いていない会社もあります。
国家公務員は60歳
一方、国家公務員には法律で決められた仕組みがあります。人事院の資料では「管理監督職勤務上限年齢制」と呼ばれる制度です。
管理監督職の職員は、60歳に達した日後の最初の4月1日までに、管理監督職以外の官職へ降任または降給を伴う転任をする決まりです。
令和3年法律第61号により、令和5年4月1日から施行されました。あわせて定年が60歳から段階的に65歳へ引き上げられています。
「7割になる」の出どころ


役職定年を調べると、必ず出てくるのが7割という数字です。この数字がどこから来ているかを知っておくと、情報の読み方が変わります。
公務員は7割と決まっている
人事院の資料によれば、60歳を超えた国家公務員の給与は、当分の間、60歳前の7割水準に設定されています。
俸給月額は原則として7割に引き下げられ、俸給月額の水準と関係する手当も同じく7割水準となる決まりです。
民間にその決まりはない
ここが大事なところです。民間企業には、7割にしなさいという法律上の決まりがありません。
各社が自分の制度で決めています。7割より下がる会社もあれば、そこまで下がらない会社もあるということです。
検索で出てくる数字に注意
「役職定年 給料 7割」といった言葉で調べると、上位に出てくるのは公務員の情報であることが少なくありません。
自分の会社に当てはまる数字ではない可能性があります。参考程度に見て、自分の会社の規程を確認するのが確実です。
給料はどこが減るのか


では民間では、具体的にどの部分が減るのか。私が以前いた会社では、次の形でした。
役職手当がなくなる
もっとも分かりやすいのがここです。役職に対して支払われていた手当が、役職を外れるのでなくなります。
基本給そのものには手をつけない会社もあります。この場合、減る額は役職手当の分だけにとどまるでしょう。
賞与が減る
見落とされやすいのが賞与です。賞与の算定に役職や等級が使われていると、役職を外れた分だけ計算の基礎が下がります。
月々の給料の下がり方より、年収で見たときの下がり方のほうが大きくなるのはこのためです。
聞かれるのは年収の金額
制度の説明をしていて、対象になる方からいちばん聞かれるのは「実際の年収はどのくらいになるのか」という質問でした。
率ではなく金額で知りたい、というのが本音のところです。自分の会社の規程を見て、手当と賞与の両方で試算しておくと不安が減ります。
例外で役職を続ける人


全員が一律に外れるわけではありません。ここも知られていない点です。
働きぶりで継続になる場合
本人の働きぶりによって、例外として役職を続けることがあります。
組織の事情で、すぐに交代できないという場合もあるでしょう。制度に例外の定めが置かれていることが多いところです。
公務員にも特例任用がある
これは公務員でも同じです。人事院の資料では「特例任用」と呼ばれています。
役職定年による降任等で公務の運営に著しい支障が生ずる場合に限り、引き続き管理監督職として勤務させることができるとされています。
例外は当てにしない
ただし例外を前提に計画を立てるのは危険です。
続くかどうかは会社が決めることで、本人が選べるものではありません。外れる前提で考えておき、続いたら幸運だったと捉えるほうが安全でしょう。
退職金への響き方


給料より見落とされやすいのが退職金です。役職定年は、ここにも影響することがあります。
ポイント制という仕組み
退職金の計算方法のひとつに、ポイント制があります。等級や役職に応じて毎年ポイントが積み上がり、退職時の合計に単価をかけて金額を出す仕組みです。
役職を外れるとポイントの積み上がり方が変わるため、退職金にも響いてくることになります。
55歳以降は増えない会社もある
さらに、一定の年齢を過ぎるとポイントが積み上がらない設計の会社もあります。
55歳で止まる形になっていれば、それ以降は何年働いても退職金の額は変わりません。知らずにいると、定年まで働けば増え続けると思い込んでしまいます。
自分の会社の規程を確認する
退職金の計算方法は会社ごとに違い、ポイント制ではない会社も多くあります。
確認したいのは次の3点です。
- 計算方法はポイント制か、給与に連動する方式か
- 役職を外れるとどう変わるか
- 一定の年齢で積み上がりが止まる定めはあるか
どれも人事に聞けば答えてもらえる範囲の話です。


役職定年をやめる会社


ここ数年、制度そのものを見直す動きが出てきました。人事の現場で感じている理由は3つあります。
人手が足りない
いちばん大きいのがこれです。労働力が足りないなかで、経験のある人を年齢だけで役職から外す余裕がなくなってきました。
若い人が管理職になりたがらない
役職定年は、下の世代にポストを空けるための仕組みでもありました。
ところが管理職になりたいという人が減っています。空けたポストに就く人がいなければ、制度が回りません。
会社の外で稼ぐ選択肢が増えた
もうひとつが働く側の変化です。会社の中だけで生きていく前提が崩れてきました。
役職を外されることが、以前ほど決定的な出来事ではなくなっています。会社の外に収入の道があれば、受け止め方も変わるからです。
ただし、見直しの動きがあるからといって自分の会社がそうなるとは限りません。制度がある前提で備えておくほうが確実です。
50代前半にできること


役職定年は、来ると分かっている出来事です。分かっているなら、先に手を打てます。
規程を先に読んでおく
まずは自分の会社の規程を読むことです。何歳で外れるのか、給与と退職金がどうなるのか。
制度の中身は人事に聞けば教えてもらえます。対象になる年齢を迎えてから聞くのでは、打てる手が減ります。
年収を試算しておく
役職手当と賞与の両方を見て、役職を外れたあとの年収を自分で計算しておきましょう。
金額が分かれば、家計をどう組み替えるかも考えられます。数字を知らないまま不安だけを抱えているのが、いちばんつらい状態でしょう。
会社に頼らない形をつくる
そして本題がここです。会社に依存せず、自分で稼げる形をつくっておくことに尽きます。
給料以外の収入があれば、役職定年も再雇用も、選択肢のひとつとして見られるようになります。役職を外れることが、生活を直撃する出来事ではなくなるからです。




よくある質問


役職定年について、実際によく聞かれることをまとめました。
役職定年は何歳からですか
会社ごとに決めるもので、法律の定めはありません。私が見てきた範囲では55歳が多いところです。国家公務員は60歳と法律で決まっています。
給料はどのくらい下がりますか
民間には決まった率がありません。役職手当がなくなり、賞与の計算基礎も下がるのが一般的な形です。金額は自分の会社の規程で試算してください。
役職定年は拒否できますか
会社の制度として定められているものなので、本人の希望で外れないようにすることはできません。例外として継続する場合も、決めるのは会社です。
退職金はいつもらえますか
役職定年は退職ではないため、そのときに退職金が出るわけではありません。受け取るのは退職するときです。ただし計算の基礎が変わることがあります。
役職定年のあとも同じ部署にいられますか
会社と本人の状況によります。同じ部署に残る場合も、異動になる場合もあるでしょう。どちらになるかは、制度ではなく人事の運用で決まる部分です。
役職定年がない会社もありますか
あります。もともと制度を置いていない会社もあれば、近年になって廃止した会社もあります。まずは自分の会社に制度があるかどうかの確認からです。
まとめ


役職定年は、いつ来るかが分かっている数少ない出来事です。分かっているうちに手を打てるかどうかで、迎え方が変わります。
- 役職定年は一定の年齢で役職を外れる仕組み。退職ではない
- 民間は55歳という区切りが多いが、法律の定めはない
- 「7割」は国家公務員の基準。民間に同じ決まりはない
- 減るのは役職手当と賞与。年収で見ると下がり幅が大きくなる
- 働きぶりによって例外で続く場合もあるが、当てにはできない
- 退職金がポイント制だと、一定の年齢で積み上がりが止まる会社もある
- 人手不足などを背景に、制度をやめる会社も出てきた
規程を読み、年収を試算し、会社の外にも収入の道をつくっておく。この3つができていれば、役職定年は乗り越えられる出来事になります。
来ると分かっているなら、先に調べておいたほうがいいね。



そのとおりです。知らないまま迎えるのが、いちばんもったいないですから。
定年後の給料と健康保険についても、人事の立場からまとめています。




役職を外れたあとの働き方を考えるとき、転職も選択肢のひとつになります。


