教育費がいくらかかるかという話は、調べるほど金額の幅が広がって、かえって分からなくなります。
結局、いくら用意すればいいんでしょうか。



進路によって3倍以上変わります。ただ、公的な調査を見れば幅の下限と上限は分かります。
文部科学省は2年ごとに「子供の学習費調査」を出しています。その最新版によると、幼稚園から高校までを全部公立で通った場合の15年間の合計は、約614万円です。全部私立だと約1,969万円です。
この記事では、その公的な数字を学校種別に分けて見ていきます。あわせて2026年に大きく変わった高校の支援制度と、大学の無償化にある条件についても整理します。
- 幼稚園から高校までにかかる金額(公立・私立別)
- 大学4年間の費用を国立と私立で単純計算した額
- 公立の小中学校では塾代のほうが大きいこと
- 2026年4月から高校の支援に所得制限がなくなったこと
- 多子世帯の大学無償化が途中で外れる条件
- 教育費のピークと収入が下がる時期が重なる理由
私は人事の仕事を20年しているFP2級の会社員です。制度の内容は文部科学省の公表資料をもとにしていますが、個別のご家庭の進路選択や資金計画についてのご相談には応じられません。
教育費の総額と公的データ


まず、全体の金額からです。文部科学省の「子供の学習費調査」は、保護者が1年間に支出した金額を学校種別に集計したものです。
最新は令和5年度の調査で、訂正版が令和8年1月16日に公表されました。この調査には学校に払う費用だけでなく、塾や習い事の費用も含まれます。
15年間の合計は進路で3倍変わる
幼稚園3歳から高校3年までの15年間について、各学年の学習費を単純に合計した金額が公表されています。
| 進路のパターン | 15年間の合計 |
|---|---|
| すべて公立 | 約614万円 |
| 幼稚園だけ私立 | 約665万円 |
| 幼稚園と高校が私立 | 約838万円 |
| すべて私立 | 約1,969万円 |
下限と上限の差は3倍以上です。ただし、すべて私立というパターンは現実には多くありません。私立に通う割合は、小学校で1.3%、中学校で7.9%です。
一方、幼稚園は88.3%が私立で、高校(全日制)は35.5%が私立です。つまり幼稚園と高校が私立、小中学校が公立という約838万円のパターンが、いちばん人数の多い組み合わせに近いと言えます。
学校種別の1年あたりの金額
次に、年単位で見てみましょう。
| 学校種 | 公立(年額) | 私立(年額) |
|---|---|---|
| 幼稚園 | 18万4,646円 | 34万7,338円 |
| 小学校 | 36万6,599円 | 174万1,516円 |
| 中学校 | 54万2,450円 | 156万359円 |
| 高校(全日制) | 59万6,954円 | 117万9,261円 |
公立でも、中学校と高校では年50万円を超えます。月あたりにすると4万5,000円から5万円です。私立小学校の174万円は、私立中学校や私立高校より高くなっています。
大学の費用は別に積み上がる
この調査は高校までです。大学の費用は含まれていません。
国立大学の授業料と入学料は、省令で標準額が決まっています。入学料が28万2,000円、授業料が年53万5,800円です。ただし各大学は標準額の20%増を上限に自分で決められるため、これより高い大学もあります。
私立大学については、文部科学省が初年度に納める額を調査しています。令和5年度の入学者で、授業料が95万9,205円、入学料が24万806円、施設設備費が16万5,271円。3つを足した初年度の合計は、平均で136万5,281円でした。
| 区分 | 初年度の合計 |
|---|---|
| 国立大学(標準額) | 81万7,800円 |
| 私立大学 全平均 | 136万5,281円 |
| 私立大学 文科系 | 119万4,841円 |
| 私立大学 理科系 | 153万451円 |
| 私立大学 医歯系 | 482万1,704円 |
入学料は初年度だけなので、2年目以降は授業料と施設設備費だけになります。それで4年間を単純計算すると、国立が約243万円、私立の文科系が約411万円、私立の理科系が約542万円です。
出典:文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(令和8年1月16日公表の訂正版)、同「令和5年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額の調査結果」(調査校600校)、「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」。4年間の金額は授業料と施設設備費を4年分として筆者が単純計算したもので、受験費用・下宿の家賃・生活費は含みません。
公立中学校は塾代が6割超


ここが、この調査でいちばん意外なところかもしれません。
学校外活動費という項目
学習費総額は3つに分かれています。
- 学校教育費…授業料、教材費、制服、通学費など学校に関わる費用
- 学校給食費…給食の費用
- 学校外活動費…塾、家庭教師、習い事、スポーツクラブなど
この3つ目が、公立では想像以上の割合を占めます。
公立小学校は7割が学校外
公立小学校の学習費36万6,599円のうち、学校外活動費は25万6,489円。構成比は70.0%です。学校教育費は20.3%しかありません。
公立中学校も同じ傾向です。54万2,450円のうち学校外活動費が35万6,018円で、構成比は65.6%。公立の小中学校では、学校に払う金額より塾や習い事に払う金額のほうが大きいという結果になっています。
高校で比率が逆転する
ところが高校になると構成が変わります。公立高校の学習費59万6,954円のうち、学校教育費が35万1,523円で58.9%。学校外活動費は24万5,431円で41.1%にとどまります。
授業料や通学費といった学校に払う費用が増える一方、塾代の総額は中学校より下がっているのが数字の上での事実です。
ここから分かるのは、教育費を「学費」だけで考えると大きく外すということでしょう。公立に通わせるつもりでも、塾代を見込まない計画は現実と合いません。
2026年に変わった高校の支援


制度の話に移ります。2026年は高校の支援が大きく動いた年です。
所得制限が2026年4月に撤廃
高等学校等就学支援金は、2026年4月1日から新制度になりました。自民・公明・維新の三党合意にもとづく改正で、いまは世帯の年収に関係なく支給されます。
それまでは年収910万円程度を超える世帯は対象外でした。令和8年度の予算額は5,824億円で、前年度の4,074億円から1,750億円増えています。
公立と私立の支給上限額
支給される上限は学校の種類で分かれます。
| 区分 | 年間の支給上限額 |
|---|---|
| 公立高校 | 11万8,800円 |
| 私立高校(全日制) | 45万7,200円 |
| 私立高校(通信制) | 33万7,200円 |
公立の11万8,800円は公立高校の授業料に相当する額です。私立の45万7,200円は、私立高校の平均授業料を勘案した水準とされています。国立高校についても実質無償となります。
出典:文部科学省「高等学校等就学支援金等」(令和8年度予算資料)。新制度の対象外となる在校生には経過措置があります。支給には申請が必要です。詳しくは在学先または都道府県に確認してください。
調査の数字は拡大前のもの
ここで注意が必要です。前の章で見た公立高校59万6,954円、私立高校117万9,261円という金額は、令和5年度の調査結果です。
つまり2026年の拡大より前の数字ということになります。所得制限で対象外だった世帯にとっては、調査の金額から支給上限の分だけ負担が軽くなる計算です。
逆に大学の費用は上がり続けています。高校を高く見積もり、大学を安く見積もるというズレが起こりやすい状況だと言えるでしょう。
大学の無償化にある条件


大学にも無償化の制度があります。ただし条件があります。
多子世帯は所得制限なしで減免
令和7年度から、扶養する子が3人以上の世帯について、大学等の授業料と入学金を一定額まで減免する仕組みが始まりました。こちらは所得制限がありません。
もともと高等教育の修学支援新制度は、住民税非課税世帯などを対象にしたものでした。令和6年度から世帯年収600万円程度までの多子世帯と私立理工農系に広がり、令和7年度に多子世帯の所得制限がなくなったという流れです。
減免の上限額は決まっている
無償化という言葉ですが、全額が免除されるわけではありません。国が定めた上限までの減免です。
| 学校種 | 国公立 入学金/授業料 | 私立 入学金/授業料 |
|---|---|---|
| 大学 | 28万円/54万円 | 26万円/70万円 |
| 短期大学 | 17万円/39万円 | 25万円/62万円 |
| 専門学校 | 7万円/17万円 | 16万円/59万円 |
国公立大学なら、ほぼ家計負担がゼロになる水準です。私立大学の場合は授業料の上限が70万円なので、平均の95万9,205円との差額は自分で払うことになります。
第1子の卒業で対象外になる
見落としやすいのが、対象になる期間です。
- 条件の1つめ…扶養する子が3人以上いること
- 条件の2つめ…その子が大学等に在学していること
条件は「扶養する子が3人以上」かつ「大学等に通っている」こと。つまり第1子が卒業して就職し、扶養から外れると、扶養する子は2人になります。その時点で第2子・第3子は対象外です。
文部科学省の資料にも、第1子の卒業後に第2子が大学に進学した場合は対象外になる図が載っています。子ども3人の年齢が離れている世帯ほど、この条件に当たりやすいでしょう。
出典:文部科学省「令和7年度からの多子世帯に対する大学等の授業料等減免について」。給付型奨学金の申請と採用が前提になります。対象となる大学等にも要件があります。実際の適用については、進学先と日本学生支援機構に確認してください。
教育費と収入減が重なる構造


ここからが、人事の目で見たときに気になる部分です。
55歳の役職定年と60歳の再雇用
多くの会社には、年齢で処遇が切り替わる仕組みがあります。55歳前後の役職定年と、60歳からの再雇用です。
役職定年では役職手当がなくなり、再雇用では契約そのものが変わります。どちらも、本人の働きぶりとは別の理由で収入が下がる仕組みです。制度としてあらかじめ決まっていることなので、避けられません。




子どもの年齢から逆算する
教育費がいちばん重いのは大学の4年間です。子どもが18歳から22歳のあいだということになります。
そこで、子どもが生まれたときの自分の年齢から逆算してみます。
| 子が生まれたときの年齢 | 子が18歳 | 子が22歳 |
|---|---|---|
| 30歳 | 48歳 | 52歳 |
| 33歳 | 51歳 | 55歳 |
| 36歳 | 54歳 | 58歳 |
| 39歳 | 57歳 | 61歳 |
| 42歳 | 60歳 | 64歳 |
36歳のときの子どもなら、大学の4年間は自分の54歳から58歳です。役職定年の時期とそのまま重なります。39歳なら57歳から61歳なので、役職定年と再雇用の両方にまたがる計算です。
単純な足し算ですが、こうして並べると位置関係がはっきりします。教育費のピークと収入が下がる時期は、偶然ではなく構造として重なりやすいわけです。
人事に来る相談は額の確認
人事として受ける問い合わせで多いのは、下がったあとの額を知りたいというものです。制度の説明よりも、手取りがいくらになるかを確かめたいという内容になります。
もうひとつ、会社側の動きもあります。扶養手当や家族手当を縮小する制度改定は各社で進んでいて、私もその対応に関わってきました。子どもがいることで上乗せされていた手当が、前提として弱くなってきているということです。
50代の教育費の備え方


では、どう備えるかという話です。私がやっていることと、FP2級の勉強で見方が変わった点を書きます。
学資保険より運用を選ぶ
以前は学資保険が教育費の定番でした。いまは低金利が続いていて、払った額に対して戻ってくる額の上乗せは小さいままです。
私は学資保険ではなく、運用で備える方針にしています。保険で貯めるか運用で増やすかは、使う時期までの年数で変わります。使う時期が近いなら元本が動かないほうがよく、まだ遠いなら運用のほうが向いているはずです。
ただし、運用には元本が減る可能性があります。入学の前年に下がっていたら、その金額で払うことになる点は変わりません。


児童手当は生活費に混ぜない
やっていることで、いちばん効いていると思うのが児童手当の扱いです。
生活費の口座に入れてしまうと、何に使ったか分からなくなります。そこで受け取ったぶんはそのまま取り置いて、生活費と混ぜないようにしています。手当の金額は制度で決まっているため、計画に組み込みやすいのも利点です。


奨学金は最後の手段ではない
FP2級の勉強をして、見方が変わったのが奨学金です。
借金として避けるものだと思っていましたが、給付型と貸与型があり、修学支援新制度の授業料減免とセットで動く仕組みだと分かりました。給付型の支給額は、国公立で自宅生が年35万円、自宅外生が年80万円。私立なら自宅生が46万円、自宅外生が91万円です。
前の章で見た多子世帯の減免も、給付型奨学金に申し込んで採用されることが前提になっています。制度を知らないまま最初から選択肢から外すと、使えるものを使えません。
生活防衛資金とは分けて考える
最後に、お金の置き場所の話です。
教育費は支払う時期があらかじめ決まっています。一方、生活防衛資金は、いつ必要になるか分からないお金です。性質が違うので、同じ袋に入れると、どちらの判断も鈍ります。


教育費のよくある質問


最後に、よく出てくる疑問をまとめます。制度は変わるので、申請の前には必ず最新の情報を確かめてください。
教育費はいくら貯めればいいですか
目安を置くなら、大学の4年分です。高校までは毎月の家計から出していく性格の支出ですが、大学は入学の時期にまとまった額が必要になります。国立で約243万円、私立の文科系で約411万円という単純計算が出発点になるでしょう。
学資保険はもう不要ですか
不要とは言えません。元本が動かないことに価値を感じるなら選ぶ理由があります。使う時期までの年数と、途中で解約する可能性で判断が変わります。
高校無償化で私立も選べますか
支給上限は年45万7,200円です。私立高校の学習費は調査では年117万9,261円なので、授業料以外の負担は残ります。施設費や制服、修学旅行費までは支援されません。
多子世帯の無償化は誰が対象ですか
扶養する子が3人以上で、本人が大学等に通っている場合です。所得制限はありません。ただし第1子が扶養から外れると子が2人になり、その時点で対象から外れます。
塾代は削ってもいいですか
判断できる立場ではありませんが、金額の大きさは知っておくべきでしょう。公立中学校では学習費の65.6%が学校外活動費です。教育費を見直すなら、額としていちばん大きいのはここになります。
大学の費用はいつから準備しますか
子どもの年齢から逆算して、自分が何歳のときに払うかを先に出しておくとよいでしょう。役職定年や再雇用と重なるなら、収入が下がる前に用意しておく必要があるという結論になります。
まとめ


教育費についてまとめます。金額の幅は進路で3倍以上。ただし下限と上限は公的な調査で分かります。
- 幼稚園から高校までの15年で、全部公立なら約614万円、全部私立なら約1,969万円
- 人数のいちばん多い組み合わせに近いのは、幼稚園と高校が私立の約838万円
- 大学4年間の単純計算は、国立が約243万円、私立文科系が約411万円
- 公立の小中学校では、学習費の65〜70%が塾や習い事の費用
- 高校の就学支援金は2026年4月から所得制限なし。公立11万8,800円、私立45万7,200円
- 多子世帯の大学減免は所得制限なしだが、第1子が扶養から外れると対象外
- 大学の4年間は、役職定年や再雇用で収入が下がる時期と構造的に重なる
- 児童手当は生活費に混ぜず取り置き、教育費と生活防衛資金は分けて置く
会社の制度で収入が下がることを前提に備えておくという考え方は、別の記事にまとめています。


